リナリアの王女
 さっきまでの威厳のある態度ではなく、私には物腰柔らかく対応してくれる。
少しでも私の不安を軽くしようとしてくれているのが分かる為、勝手にこちらの世界に連れてこられたとはいえ憎めないのだ。
「あの、自己紹介、あれで良かったのかしら・・・?」
私はさっきの自己紹介があれで大丈夫だったのかが気になって食事どころではない。
「心配いらない。俺の婚約者となる者が頭を下げた事に対して皆は驚いたかもしれないが、世界が違えばこのような場面での対応の違いもあるだろう。皆もそれは分かっているはずだ」

そうか、クラウドが予め私が異世界から来たと皆に伝えておいてくれたおかげで、思っていたよりスムーズに事が進んだのだろう。
サラちゃんが言っていたクラウドが上手くフォローしてくれるってこの事だったんだろう。

「さあ、昨日は一緒に食事が出来なかったのだから、今日の朝食を楽しみにしていたのだぞ?」

今日はヒールのある靴を履いているが、クラウドは私より背が高いので少し前屈みになりながら私の目を見つめる。
深い蒼の瞳に見つめられるのはやっぱり暫くは慣れそうにない。
「わ、分かった。緊張でもうお腹がペコペコだよ」
照れているのを悟られないように私は下を向きながらそう言った。
するとクラウドはクスッと笑いながら、また私の腰にしっかりと腕を回してダイニングルームへと連れて行ってくれた。







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