リナリアの王女
 「ここがエリーゼの部屋だ。とりあえずダイニングまでの道は分かったか?」
クラウドと話しをしていたら、私の部屋まで着いたようだ。
「ええ、何とか分かるわ」
「なら良かった。ここの廊下の角、あそこの部屋が見えるか?そこが俺の執務室だ。何かあったら遠慮なく来て良いからな」
クラウドは部屋を指さしながらそう言った。
「ありがとう。なるべくクラウドのお仕事の邪魔はしないように頑張るわ」

さすがに仕事中に邪魔はしたくない。

「気にしなくていい。むしろたまに来てくれた方が俺の気がまぎれる」
ずっと仕事詰めだと肩が凝る、と笑いながら言うクラウド。



あぁ・・・この人は本当に・・・。




私は彼が与えてくれる愛情に同じ分だけ返せるか分からないというのに・・・。
私をこんなに優しく包み込むように接してくれる。
惜しみなく与えられる優しさがとても心地良い。





私はきっとこの人の事を大切に思う日が来るだろう。





それは至極当然の事のように頭を過ったのだった。





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