リナリアの王女
 「この前のマドレーヌを作った時なんだけどね?結構多めに持って行ったのに、クラウドったらグレンさんに渡さないって言ったのよ?」
『クラウド様がそのような態度を?想像がつきませんね』
それにはサラちゃんも驚いたような顔をしていた。
その場にいた私だって驚いたんだ。

特に使用人さん達の前のクラウドは優しいながらも毅然とした態度を崩す事はなく、国王の品格を漂わせるものである。
サラちゃんは誰かに言いふらすような子じゃないって分かっているからこそ、この話しをしたのだ。

「グレンさんが関わるとそんな面も見れるみたいなの。だからね?グレンさんからクラウドの小さい頃の面白いエピソードが沢山聞けそうだと思わない?」
『確かに、エリーゼ様の前ではクラウド様の纏雰囲気が和らぎこそすれ、子供っぽい面など見えないですもんね』
「グレンさんならクラウドの弱みになりそうなこと沢山握ってそうでしょ」
私がそう言うとサラちゃんは苦笑しながら、



『国王の弱みを握ろうなどと考えるのはエリーゼ様ぐらいですね』



と言った。

「別に弱みを握って何かをしようなんて思ってないけど、クラウドの恥ずかしい過去とかも知ってみたじゃない?」
『クラウド様もお幸せですね』
「幸せ?どうして?」
『エリーゼ様の事を深く想っていらっしゃるからこそ、異世界から家族と離れさせてしまう事になってでも連れてきてしまった事を気にしていらっしゃいましたから』

この世界に来ることになった要因には私の潜在的な気持ちも関わっているとクラウドは言った。
その段階で私にはクラウドだけを責める事は出来ないと思った。
いくら自覚しているものではないといっても自分にも要因があるというのだから。


しかし家族や親友、普段はなんとも思っていないが元の世界と二度と関わる事が出来ないという事実は悲しみしか生まなかった。




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