リナリアの王女
　「ところで、今日はグレンさんはここにはいないのね」
「俺の大切な婚約者様は、俺よりもグレンの事が気になるのかな？」

私の反応を分かっていてそんな意地の悪い言い方をしているが、その瞳の奥には少し嫉妬の色が見える気がする。

・・・って自分で言っていて自惚れすぎている気がして恥ずかしいが・・・。

「そういうわけじゃないけど、ただ気になって聞いただけよ」
「グレンの事なんか気にしないでもっと俺に興味を持ってもらいたいな」
分かっていてもこういう会話をしているとやっぱり恥ずかしい。




「クラウドの事が気になっているからこそ、こうして紅茶の差し入れをしているんじゃない」




仕返しにと思って素直な気持ちを伝えてみた。
クラウドの事だ、飄々とした態度を崩すことなく更に返してくるだろうと思った。







「そ、そうか・・・」






予想に反して少し顔を赤らめ、今まで逸らす事のなかった視線を私から外した。
そんな反応が返ってくるとは思っていなかった私は逆にその反応に困ってしまった。
言ってしまった言葉は今更取り消す事なんて出来ない。

「えっと、クラウド、」
「そうだ！グレンがここにいない理由だったな！」

彼はどう考えてもかなり無理矢理に会話を変えてきた。
確かにこの空気に私も困っていたし、初めにグレンさんの事を聞いたのは私だが。




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