リナリアの王女
 リナリアという国では王位継承権を持つ皇子が妃を見つける事で国王となる事が出来るらしい。
問題はその妃を見つける事にある。
所謂お見合いパーティーのようなものを開いて見つけるのではなく、皇子は運命の相手が決まっており、その相手を見つける事が国王となる為の試練のようなものになっているらしい。
運命の相手がこのリナリアの国民だった場合は簡単なのだが、
稀に国外――――――というか違う世界に運命の相手がいる場合がある。
どうやら私の場合がそうだったらしい。
「どうやって・・・私をここに連れてきたの・・・?」
「水晶に触れただろう?それがエリーゼのいた世界とこちらの世界を繋ぐ鍵となる。エリーゼが水晶に触れたらこちらに自動転送するようになっていた」
ただの夢の一部だと思っていたあの水晶がそんな重要な役割を担っていたなんて・・・。
「私の意志は!?勝手に連れてこられたら困るわ!元の世界に帰して!」
こんな勝手な事があって良いのだろうか。
私の意志とは関係なく異世界とやらに連れてこられて、更にその国の妃になれなんてあんまりすぎる。
「エリーゼ、お前は自らの意志でこちら側に来たはずだ。無理矢理連れてきたなど心外だな」
「私の意志!?そんなわけないじゃない!!だって私はこんな世界に来るなんて知らなかったのよ!?」
これが無理矢理じゃなかったらなんだって言うのだ。
それを私が自分の意志で来たなんて・・・。


「あの水晶の空間に行く事が出来た事態、潜在的にこちら側の世界に来る意志があった事になる」
まったく意志がなければあの空間に行く事さえ出来ない、と男性は言った。


「そんな・・・そんなわけ・・・」
潜在的な意志と言われてしまえば、私にはそれを完璧に否定する証拠など存在しない。
しかし釈然としないのも確かなのだ。
「エリーゼはなぜあの水晶に触れたのだ?」
綺麗な蒼い瞳に真っ直ぐに見つめられる。
私があの水晶に触れた理由・・・


「あの水晶に触れればあなたが現れる夢について分かる気がした・・・。自分の中の何か大切な部分が埋まるような気がして・・・」


夢だと思っていたのだ。だから何をしても問題ないと。
それがこんな事になってしまうと知っていたのならばあの水晶なんかに触れなかったのに・・・。



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