リナリアの王女
 「俺が現れる夢?」
「とぼけないでよ!毎日毎日夢の中でエリーゼって私に呼び続けていたじゃない!!」
あの夢さえなければ、私が水晶に触れる事などなかったというのに。
それをこの男は知らない振りをするというのか。
「悪いがその夢について俺は無関係だ。そもそも異世界同士を繋ぐのは簡単な事ではないからな。色々な条件が重ならなければ上手くいかないのだ」
確かに俺はエリーゼを求めていたが、夢に出る事は出来ない。
そう男性に続けられてしまい、私は何も言えなくなってしまった。


私も彼を求めていたという事なのだろうか・・・。


でも異世界に来てしまうなんて・・・私はこれからどうしたら良いのだろうか・・・。
不安から視界が滲んできた。
「泣くな。せっかく会えたというのに、俺はまだエリーゼの笑顔を見る事が出来ていない」
いつの間に隣に来たのだろうか。
零れ落ちそうな雫を指で優しく拭ってくれるこの男性。


「あなたが私をこちら側の世界に連れてきたのは、私を好きだからというわけではないのでしょう?」


つい言ってしまったこの言葉。
妃を見つける事が出来なければこの国の国王となる事は出来ないのだ。
何としてでも連れてきたかったのはそういう理由がからだろう。
心の中でそう続けた。
すると男性の雰囲気が変わった。





傷ついたような、苛立ったような・・・。





どうしてそんな顔をするなだろうか。
私が悪い事をしてしまったような気がする。



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