リナリアの王女
「クラウド、その・・・」
だめだ。
クラウドに抱き締められた安心感からか涙が出てきてしまいそうになる。
私が泣いてはいけない。
早く謝らなくては。
「私、クラウドに謝らなきゃいけないの」
零れ落ちそうになる涙を必死に堪えて、私がここに来た理由を話した。
「謝りに?」
彼は私を抱き締めたままの状態で私に聞いてきた。
謝る事なんてあっただろうか、という感じである。
「この前の事、クラウドの好意でやってくれたのに、私・・・クラウドに軍手を投げつけちゃって、その、ごめんなさい」
声は震えていないだろうか。
涙は堪える事は出来ず、とっくに溢れてしまっている。
しかし、抱き締められている事でクラウドに気づかれる事はまだないだろう。
「エリーゼが謝る必要なんてないよ。あれは俺がやり過ぎた」
彼は少しも怒っていない。
「エリーゼが恥ずかしがり屋だと知っているのに調子に乗り過ぎたんだ。ごめんね」
「クラウドが謝る必要なんてないわ!」
私は私に甘過ぎるクラウドについ大きな声で言ってしまった。