イジワル婚約者と花嫁契約
そのまま今度はお兄ちゃんに抱きしめられる。

「しかもなんだその言い方は!灯里に対して冷たすぎだろう!!」

その言葉にさっきの健太郎さんの言動を思い出す。

そういえばお兄ちゃんが一緒にいるというのに、いつものように猫被っていなかった。
いつも通りの健太郎さんだった。

「まさかお前……っ!それが本性なのか!?」

わなわなと身体を震わせながら指差すと、健太郎さんは呆れたように大きく息を吐いた。

「そうですよ、これが素の俺です。認めたんだからいい加減灯里を返してくれませんか?まだ話が終わっていないので」

あっさりと認め淡々と話す健太郎さんに、お兄ちゃんの怒りは増すばかりで、さらに強い力で抱きしめられてしまった。

「なにを開き直っている!そう言われて灯里を渡すわけないだろうが!……第一ここ一週間、灯里を悲しませていたのはお前だろ?お前のせいで灯里が辛そうにしていたのに、どの面下げてここに来たんだ」

「え……?」

「ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!」

本当のことだけど、それを健太郎さんに言われてしまったら困る!
だって健太郎さん派知らないもの。
私の気持ちも、一週間前ふたりを見てしまったことも――。
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