イジワル婚約者と花嫁契約
世間一般で言うお姫様抱っこに、通り過ぎる人達は誰もが振り返って見ていく。
それがまたさらに私の羞恥心を煽った。
「自分で歩けますから下ろして下さい!」
「無理。ちゃんと話してくれるまで離さねぇから」
私の話など聞く耳持たずで、呆気にとられているお兄ちゃんを残し、スタスタと歩き出す。
「ちゃんと掴まれ」
相変わらず周囲の視線が突き刺さる。……でも、今はそれよりももっと気になるものがある。
「早く」
いつまでたっても掴まない私に痺れを切らしたように発せられた言葉。
どうしてこんなことしているのか分からない。
健太郎さんの真意が見えない。だけどもうそんなのどうでもいいや。
思い切って健太郎さんの首元に両腕を回し、ギュッとしがみついた。
だって私はこの人が好きだもの。
今はただ彼のぬくもりを感じていたい。そう思うから。
すると健太郎さんの足は止まり、私の耳元でそっと囁いた。
「いい子だ」
もう本当にいやだ。
囁かれた耳元が燻って熱くてたまらない。
なのに健太郎さんは何事もなかったように、また足を進める。
こんなこと健太郎さんにとっては全然平気なことなんだ。
私はこんなにもドキドキして、胸が苦しくて仕方ないというのに――……。
それがまたさらに私の羞恥心を煽った。
「自分で歩けますから下ろして下さい!」
「無理。ちゃんと話してくれるまで離さねぇから」
私の話など聞く耳持たずで、呆気にとられているお兄ちゃんを残し、スタスタと歩き出す。
「ちゃんと掴まれ」
相変わらず周囲の視線が突き刺さる。……でも、今はそれよりももっと気になるものがある。
「早く」
いつまでたっても掴まない私に痺れを切らしたように発せられた言葉。
どうしてこんなことしているのか分からない。
健太郎さんの真意が見えない。だけどもうそんなのどうでもいいや。
思い切って健太郎さんの首元に両腕を回し、ギュッとしがみついた。
だって私はこの人が好きだもの。
今はただ彼のぬくもりを感じていたい。そう思うから。
すると健太郎さんの足は止まり、私の耳元でそっと囁いた。
「いい子だ」
もう本当にいやだ。
囁かれた耳元が燻って熱くてたまらない。
なのに健太郎さんは何事もなかったように、また足を進める。
こんなこと健太郎さんにとっては全然平気なことなんだ。
私はこんなにもドキドキして、胸が苦しくて仕方ないというのに――……。