イジワル婚約者と花嫁契約
少し歩いたところでまた健太郎さんの足は止まった。
少しだけ顔を上げて周囲を見回せば、ここは有料駐車場ですぐ近くには見慣れた車が停まっていた。

私を抱き抱えたまま器用にポケットから鍵を取り出すと、ボタンを押してロックを解除した。

「よっと」

そのまま助手席のドアを開けると、そっと私を下ろしてくれた。

「シートベルトしめておいて」

そう言うとクシャッと私の髪を撫で、ドアを閉めるとすぐに運転席に乗り込んだ。

「とりあえずお兄さんが追ってきそうで怖いから、移動するから」

すぐに車をはしらせ、国道を突き進んでいく。
車内は陽気な音楽が流れているだけで、私も健太郎さんもお互い口を開くことはなかった。

これからどうすればいいのか。そのことで頭がいっぱいだった。



「ここでいいか」

そう言って健太郎さんが車を停車させたのは、公園の駐車場だった。
夜の公園にわざわざ訪れる人などいるはずなく、健太郎さんの車以外停まっていなかった。

エンジンが切れると、一気に静寂に包まれ緊張感が増していく。
その中で健太郎さんがシートベルトを外した音が異様に響き、身体は驚くほど反応してしまった。
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