イジワル婚約者と花嫁契約
「驚きすぎ。つーか何にそんな怯えているわけ?」

ギシっと響くと少しだけ健太郎さんが距離を縮めてきた。
それだけで心臓は破裂してしまいそうだった。

「で?どうしてメールも電話も無視していたか、ちゃんと理由を聞かせてもらおうか?」

理由……。
健太郎さんは知りたがっているけど、聞かせちゃってもいいの?
だってこんな気持ちなんて、迷惑じゃないの?

どんな理由があって健太郎さんは、私との結婚を望んでいるのか分からない。
でもひとつだけ確かなことがある。
健太郎さんには他に相手がいるってこと。
一緒に指輪を選んじゃうような彼女がいること。

それなのに私が「好き」って言ったら、迷惑でしょ?

「灯里、ちゃんと言え。これから結婚するのに、なにかあるたびに灯里は俺に直接言わず逃げ続けるのか?」

「……っ!」

なにそれ。
私との結婚なんて望んでいないくせに。

カッと頭に血が上ってしまい、気付いたら気持ちを全て吐き出すように言ってしまっていた。
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