イジワル婚約者と花嫁契約
「私のことなんて、ほっといてください!」

「……は?」

そうだよ、私のことなんてほっといてくれればいい。
好きでもないのに結婚したいなら勝手にすればいい。……だけどこうやって構うのはやめてほしい。

「何それ、意味が分からないんだけど」

私の言葉に明らかに健太郎さんは不機嫌そうに言葉に棘を生やす。

「そのままの意味です!……もうこうやってかまわないでください」

それでも気持ちは昂ぶったままで、言葉を止めることができない。

「だって健太郎さんは別に私と本気で結婚したいなんて、思っていないんでしょ?」

「……おい、あまりふざけていると怒るぞ」

いつもとは違う声色に一瞬怯みそうになる。
だけどここで押し黙ってはだめ。
真実を知ってしまった以上、このまま流されるように健太郎さんと一緒にいたくないもの。

「私はふざけてなんていません!……ふざけているのは、健太郎さんの方でしょ?」

「俺は全然ふざけてなんていないけど」

自信満々に返ってきた言葉に、カチンとくる。

「嘘つかないで下さい!ちゃんと付き合っている人がいるくせに、どうして私とお見合いなんかしたんですか!?」
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