イジワル婚約者と花嫁契約
「は?なにそれ」

「あっ……」

言った後にハッと我に返る。
やだ……私ってばいま何を言った?

ゆっくりと健太郎さんを見れば、驚き目を見開いたまま私を凝視している。

どうしよう、なんであんなこと言っちゃったのよ。

どうしたらいいのか分からず、ただ下を向き拳を握りしめることしか出来ない。
より一層シンと静まり返る車内。
狭い密室空間に、健太郎さんの声がやけに響き渡った。

「……なぁ、それってどういう意味?」

「――え?」

咄嗟に顔を上げてしまった瞬間、逃がさないと言わんばかりに強い力で腕を掴まれてしまった。

「どうして俺に付き合っている人がいると思ったわけ?……それになんでそれで怒っているんだ?」

「それっ、は……っ」

「視線逸らすな」

咄嗟にまた視線を下げようとした時、それを止める声にビクッと身体が反応してしまう。
けれど健太郎さんはますます腕を掴む力を強め、より一層真剣な面持ちを見せる。

「俺の目を見てちゃんと言え」

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