イジワル婚約者と花嫁契約
目を見たらだめ。
咄嗟にそう判断できるのに、心はそれを許してくれない。
言われるがまま健太郎さんの瞳を見つめれば、吸い込まれてしまいそうになる。

だめ……。もう無理。
この人を目の前にして嘘をつけるほど、私のスキルは高くないよ。

「見ちゃったんです、私。……一週間前、健太郎さんがきれいな人と一緒に指輪を選んでいるところ」

「一週間前?……指輪?」

とうとう言ってしまった。
だけど健太郎さんはなぜか身に覚えなどないと言いたそうに、首を傾げるばかり。

あれは間違いなく健太郎さんだった。
もしかしてバレたらまずい相手だから知らないフリを続けているの?

そんな疑問が思い浮かんだ時、健太郎さんはなにかを思い出したように「あぁ!」と大きな声を上げた。

「もしかしてあの時か」

「あの時……?」

そう言われても全然分からないよ。
それはなに?相手がいるってこと認めちゃっているの?
だとしたらあまりに堂々としすぎていて、こっちもどうしたらいいのか対応に困る。
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