イジワル婚約者と花嫁契約
一度溢れ出てしまった気持ちは止まらなくて、全て正直に言葉として出てしまった。
でも嘘なんてなにひとつない。
健太郎さんのことが好きだから。だから起こしてしまった行動だった。
それも全部健太郎さんに知って欲しかった。

一方的に私が伝えたものの、健太郎さんはなにも言わず私を凝視したまま。
瞬きさえもせずに。

「あの……健太郎さん?」

不安になりつつも、今の現状に耐え切れなくてそっと名前を呼ぶと、健太郎さんはハッとしたように瞬きを繰り返し、そしてそんな彼の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていった。

「っとに……言うのが遅いんだよ」

「――えっ、キャッ!?」

背後に回って腕によって、勢いよく健太郎さんに抱き寄せられてしまった。
すっぽりと私の身体は彼の腕の中に収まってしまうと、健太郎さんは苦しいくらいきつく抱きしめてきた。

「なんだよ、それ。いつの間にやきもち妬くほど俺のこと好きになったわけ?」

「そっ、それは……!」

事実ながら、そんなストレートに聞かれてしまってはどう答えたらいいのか分からなくなる。
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