イジワル婚約者と花嫁契約
「とにかく灯里は連れて帰るからな」

そう言うとお兄ちゃんは乱暴にシートベルトを外し、無理矢理私を車から降ろした。

「ちょっとお兄ちゃん!?」

そしてもう離さないと言わんばかりに、きつく肩を抱いてきた。

健太郎さんを見れば、嵐のようにやってきたお兄ちゃんに呆気にとられている。
だけど私と目が合うと、目を細め微笑んだ。

甘い視線に一瞬でまた心を持っていかれてしまう。
だってあんな笑顔、反則だ。

「……おいこら。俺がいるのになにふたりで合図を送っているんだ?」

「えっ!?べっ、別に合図なんて……」

「当たり前じゃないですか。僕と灯里は愛し合っているんですから」

否定する私とは違い、肯定を通り越した物言いに、お兄ちゃんは身体をわなわなと震わせた。
そんなお兄ちゃんを見て、健太郎さんは笑顔で言い放った。

「そんな俺達を邪魔しているのはお兄さんですよ?だけどおとなしく灯里を引き渡します」

「なっ、なんだとっ!?」

< 158 / 325 >

この作品をシェア

pagetop