イジワル婚約者と花嫁契約
いまだに差し出されたままの手をそっと取ると、健太郎さんは驚いた。

「全然嫌じゃありませんから」

力強く伝えると、そのまま車から降りた。
呆気にとられる健太郎さんだけど、私が降りたのを確認すると少しだけ口角を上げて大きく息を吐いた。

「じゃあもう聞かないから。……こっち」

ドアを閉め強引に引かれていく腕。
途中何度も足がもつれそうになりながら、エレベーターに乗り込み降り立ったのは二十回の角部屋。
乱暴に鍵を開けると、腕を引かれそのまま家の中に押し入れられた。

「……っ」

ドアが閉まる音と共に塞がれてしまった唇。
さっきのキスとは比べ物にならないくらい深い口づけに、思わず息も声も漏れてしまう。
それでも健太郎さんはキスをやめてくれなくて、息苦しさを覚えていく。

暗闇の中交わすキスは、お互いの息だけしか聞こえなくて羞恥心を煽られる。

「ごめん、俺、余裕ない」

キスに合間に盛れた吐息交じりの声が妙に色っぽくて、ギュッと胸が締め付けられる。
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