イジワル婚約者と花嫁契約
緊張でいっぱいだったのに、キスに溺れていく。

そのまま乱暴に靴を脱がされ抱き抱えられると、真っ暗な室内を奥へと進んでいく。
その途中も何度もキスをされ続け、なにも考えられない。

健太郎さんが好き。

それだけしか考えられなかった。

ある部屋のドアノブを器用に開け、下ろされたのは一人で寝るのは十分広すぎるベッド。
そのまま覆いかぶさってくる頃には、暗闇にも慣れてきて健太郎さんの表情が見える。

「灯里……」

余裕なく切なげに発しられた声に、胸が鳴る。
ネクタイを緩めながらキスをする姿に、気持ちが加速していく。

それからはもう夢中だった。
ただ健太郎さんに与えられるぬくもりだけ感じていた。

そして願ってしまったの。
このままずっと健太郎さんとこうしていられたらいいのに、って――……。
< 197 / 325 >

この作品をシェア

pagetop