イジワル婚約者と花嫁契約
「えっ……あのっ!」

手!手!!

あまりに自然に掴まれた手に、反発することも出来なかった。

「着物じゃ歩きづらいだろ?」

「それはそうですけど……!」

だからってなにも手を繋ぐことないじゃない!

「別に手を繋いだっていいだろ?近い将来、俺の嫁になるんだから」

「……っ!なりません!!」

からかうように言う彼に、すぐさま怒りを露わにするものの、ますます彼は愉快そうに笑うだけ。
そんな私達のやり取りに気付いた仲人さんからは、「すっかり仲良しになっちゃって」なんて言われる始末。
結局両親のところまで手を繋いだまま向かった私達。
それを見た両親達は盛り上がり、私以外上機嫌のまま人生初のお見合いは幕を閉じたのだった。



「着物疲れたでしょ?」

「うん、もう苦しくて仕方なかったよ」

帰宅後すぐにお母さんに着物を脱がせてもらうと、締め付けから解放されホッとした。

「でもいい経験になったでしょ?着物で食事も初めてだったし」

「まぁ……うん」

成人式の時に着たけれど、さすがに着物で食事はしなかった。
そう思うとお母さんの言う通り、いい経験になったのかもしれない。
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