イジワル婚約者と花嫁契約
どれくらい笑われていただろうか。
その隣でひたすら笑う姿にキュンとしてしまっていると、健太郎さんは落ち着かせるように大きく息を吐いた。

「あー……なんかマジで幸せ。こうやって灯里と朝を迎えられるとか。……なんかいいな」

もう本当に勘弁してほしい。
朝から人をキュン死にさせるつもりだろうか。
このままずっとベッドの上で過ごしていたくなってしまう。

「あっ、そういえば灯里が寝ている間に家には連絡入れておいたから」

「え?」

「無断外泊とかまずかっただろ?……とくに兄さんにバレるのは」

「……あっ!」

すっかり忘れていた、家に連絡を入れること。
昨夜はただ健太郎さんのことで頭がいっぱいだったから。

「すみません、ありがとうございました」

「ご両親の提案で、職場の先輩の千和さん?って人の家に泊まったことになっているから。だから兄さんに聞かれてもそれで合わせろよ?」

なるほど、さすがはお兄ちゃんのシスコンぶりを把握している両親だ。
私がいつも慕っている千和さんの家に泊まったことになっているのなら、問題はない。……だけど、家に帰るの恥ずかしいな。
だってそれってつまり、昨夜私は健太郎さんの家に泊まったことを、知られているってことなのだから。
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