イジワル婚約者と花嫁契約
「元気そうでよかったよ。あの時は本当焦った」

「……ごめんね、心配かけちゃって」

お兄ちゃんの目の前で倒れちゃったし。きっと逆の立場だったら私だって相当焦っちゃうと思う。

「腑に落ちないが、あいつに助けられたのは事実だな。まぁ、ここの跡取り息子ってだけはある。この部屋だってあいつが用意してくれたんだろ?」

「え……跡取り息子って健太郎さんが!?」

驚きのあまりつい大きな声を出してしまったものの、傷口が痛み顔を顰めてしまう。

「バカ、大きな声を出すな!大丈夫か?」

「うん。……でも本当なの?健太郎さんがここの跡取りだなんて」

信じられなくて確認するように伺うと、お兄ちゃんは逆に驚いた。

「なんだ、知らずに見合いしたのか?……あいつはここ、佐々木総合病院の跡取り息子だぞ?」

とてもじゃないけれど、嘘をついているようには見えない。
じゃあ本当なんだ。健太郎さんがここの跡取り息子って。

「まぁ、あいつのことはどうでもいいとして、とにかく今はゆっくり休んで早く良くなれよ」

「うんありがとう。仕事、ごめんね。千和さんにも謝っておいて」

「大丈夫、気にするな!受付業務には臨時で誰かつけるから」
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