イジワル婚約者と花嫁契約
確かに最初は嫌々受けた話だった。
嫌で断りたくて堪らなかった。……だけど本当の健太郎さんは違ったの。
二重人格で強引な人だけど、優しくて誰よりも私のことを分かってくれた。
怒ってくれる人――……。

なのに言い返せないのはなぜ――?

「すみません、しゃべりすぎました。……失礼します」

なにも言い返せないまま、梅沢さんは一礼すると病室から出ていった。

……悔しい!
悔しくて拳を握りしめてしまう。

言われっぱなしで悔しくて、なにも言い返せない自分も悔しい。
だけど言い返せなかったのは、梅沢さんの話が真実な気がしてならなかったから。

ずっと健太郎さんは女慣れしていると思っていた。
街で見かけた時、すごくふたりの雰囲気は自然体で、お似合いだと思った。

今になって思う。
もしかしたら本当に私と健太郎さんの結婚には、梅沢さん達が話していたような取引があるのかもしれないと――。

だって健太郎さんみたいなハイスペックな人が、写真を見ただけで私と結婚したいと思う?
ずっとそれが不思議で仕方なかった。
それにあまりに一方的だったし。
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