イジワル婚約者と花嫁契約
だけどそれはつまり、この結婚の裏にはうちの親からの援助があった。
跡取りである健太郎さんは、両親に言われそれで渋々受けた。家のために――。
だから梅沢さんにも別れを切り出した。

こんなこと信じたくないけれど、そう思えば全て辻褄が合ってしまう。

「もうやだっ……」

入院してからずっと張り詰めてきた糸が一気に切れてしまい、とめどなく涙が溢れ出す。

なにが真実でなにが嘘なのか分からない。
信じたいのに、信じることもできない。

「私、どうしたらいいんだろ」

こんなにモヤモヤしたまま、これからも健太郎さんとの関係を続けていけるの?
それが私にとって幸せなことなの……?

ううん、そんなの違う。
このまま知らないフリして、聞かなかったことにして。
それで幸せになれるとは到底思えない。

それに私、健太郎さんや両親からなにも聞いていないじゃない。

慌てて溢れ出た涙を拭った。

そうだよ、なにも聞いていない。
なのに勝手に想像して決めつけちゃうのはよくないことだよね。
泣いている場合じゃないよ。

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