イジワル婚約者と花嫁契約
「和臣もきっと安心しただろう」

「そうね、あの子灯里が入院中、ずっと気が気でなかったのよ?仕事サボって何度も病院に行こうとしていたし」

「そうだったんだ」

そしてきっとそんなお兄ちゃんを、田中さんが会社まで引きずっていったんだろうな。
その時のお兄ちゃんの様子を想像してしまうと、笑えてしまう。

最近お兄ちゃんは忙しいようで、今日もまだ帰宅していない。
きっと仕事が終わらないのだろう。

「だけど本当、たまたま佐々木さんの病院に搬送されてよかったわよね」

「そうだな、灯里も入院中なにかと心強かっただろ?」

笑顔で話すふたりに、顔が強張ってしまう。

どうしよう、食事が終わってからさり気なく切り出そうと思っていたけど、話題が出たし、サラッと聞いちゃったほうがいいのかな?
逆に改まって「私と健太郎さんって政略結婚なの?」「援助の話は本当?」なんてヘビーな話題、切り出せないかもしれない。

そう思うと自然と食べ進める手も止まってしまう。
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