イジワル婚約者と花嫁契約
この一週間メールで連絡を取るばかりで、お父さんが言っていたようなデートのお誘いなど全くない。
それはそれで別にいいんだけど、結局のところ私も私で両親に打ち明けるタイミングを掴めずにいる。

こうなったら一度デートして『最悪だった』って言った方が効果的なのかもしれない。とか考えている。
両親なら『一度会っただけでは分からないだろう』とか言い出しそうだし。
なにより両親は彼のことを気に入っている。

断りたいものの、タイミングも方法さえも全く分からずじまい。

とにかく今は時間が経つのを待って、時期を見て話そうと考えているところだ。

ホームに到着した電車に乗り込むものの、相変わらずの満員電車に憂鬱になる。
どうにか場所を確保し、早く最寄り駅に到着することばかり願っていた。


最寄駅で電車から降り、改札を抜け少し歩くと見えて大きなビル。
地上四十五階建ての一角に私が勤める会社のオフィスが所在している。

【有限会社クラルテプロモーション】

webサイトの企画・制作・運営支援および管理業務や、webサイト全般に関わるコンサルティング業務を主にしている会社だ。
会社設立十二年になる御社は、兄の一之瀬和臣(34)が設立した会社だ。

< 25 / 325 >

この作品をシェア

pagetop