イジワル婚約者と花嫁契約
するとお兄ちゃんは前を見据えたまま、ゆっくりと話し出した。

「灯里、俺はやっぱりあいつは気に入らない。妙に攻撃的だし、非の打ちどころがないし、なにより認めたくないが俺と少しだけ似ている部分もある」

「少しではなく、大変似ているところがおありかと思いますが?」

すかさず運転席から突っ込みを入れてきた田中さんに、お兄ちゃんは吹き出した。

「バカ野郎!全然似ていない!!」

さっきは似ていると言っていたくせに……。
お兄ちゃんらしい言動に和まされる。

するとお兄ちゃんは「しまった」と顔を顰めながら、わざとらしく大きな咳払いをした。

「とっとにかくだ!俺はあいつが嫌いだが、でも灯里を想う気持ちだけは認めているんだ。……それに俺はあの報告書に嘘はないと思っている。だから精一杯自分の気持ちをぶつけてこい!……もうあんなにボロボロな灯里を見たくない」

「お兄ちゃん……」

ぶっきらぼうな言葉に、優しさを感じる。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「ありがとうって思うなら、早く幸せになれ」

伸びてきた手によって乱暴に撫でられた頭。
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