イジワル婚約者と花嫁契約
「四人ともえらく乗り気になってくれたよ。“運命的で素敵だ”って。……灯里の両親や俺の両親が灯里に真実を告げなかったのは、俺が口止めしていたからなんだ。だから四人のこと責めないでくれ」

「どうして口止めしたんですか?言ってくれればよかったのに」

そうだよ、お見合いの際言ってくれたらもっと違っていたのに。

聞きたくて顔を上げれば、健太郎さんは「バーカ」と罵ってきた。

「もう会えないと思っていた灯里と再会できたんだ。もう一度ちゃんと灯里と一から始めたいと思ったんだ。……灯里が俺に夫になるための三ヶ条を突きつけてきたように、今度は俺から、な」

まるで少年のように笑う健太郎さんにドキッとさせられてしまった。

「それに灯里の両親から聞いていたんだ。……灯里は自分の亡くなった両親のことをほとんど覚えていないって。俺が話したことで辛い過去をわざわざ思い出して欲しくなかったから。それは俺の両親も同じ思いだった。……だから誰も言えなかったんだよ。……悪かったな」

「そんなっ……!そんなことないです」

だってそれは私のことを思ってのことだったんでしょ?
だったら謝ることない。逆に私が感謝するべきことだよ。
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