イジワル婚約者と花嫁契約
「ありがとうございます、私のこと考えてくれて。……ううん、いつもそう。いつだって健太郎さんは私のこと考えてくれていた」

再会してからも、もしかしたら再会する前も。

「それは当たり前だろ?俺にとって灯里はそういう存在なんだ。忘れたくても忘れられない存在。……なのに灯里は忘れていたからさ、それが悔しくてつい何度か意地悪しちまった」

「意地悪……?」

「あぁ、灯里のいうちょっと悪い俺になってみた。それに灯里が突きつけた三ヶ条の倍以上の十ヶ条を突きつけたし」

呆気にとられてしまった。
最初から不思議だった。どうして健太郎さんは私に“嫁になるための十ヶ条”とやらを送る付けてくるのって。
だけどその答えが今分かったよ。
そもそもの原因は私だったんだ。

すると健太郎さんは私の身体を引き離し、おもむろに左手を取ると薬指にそっとキスを落とした。

「えっ……!けっ、健太郎さん!?」

突然のことに顔が熱くなってしまう。
だけど健太郎さんは表情を変えることなく、真剣な面持ちで私を見つめてくる。
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