イジワル婚約者と花嫁契約
「私も、健太郎さんのこと幸せにします」

「――え?」

突然そんなことを言い出した私に健太郎さんは驚き、身体を離すと顔を覗き込んできた。

「だって不公平じゃないですか。……私だって健太郎さんのこと幸せにしたいです」

「灯里……」

ずっと健太郎さんは私のことを忘れずにいてくれた。
だからこうやって再会することができたんだ。健太郎さんが私のことを見つけてくれたから……。
今感じる幸せも全部健太郎さんのおかげなんだ。

なのに私は……?健太郎さんに幸せを与えられたままなんて嫌だもの。

そう訴えるように見つめると、健太郎さんは急に顔を顰め、またきつく私を抱き寄せた。

「バカ。お前はただ俺に守られていればいいんだよ」

さらにきつく抱き寄せられてしまい、言葉が出せない。

「むしろそのために俺はずっと頑張ってきたんだ。……灯里を守れる男になるように、灯里を幸せにできる男になれるように、な。……まぁ、途中少し脱線しちまったけど」


< 289 / 325 >

この作品をシェア

pagetop