イジワル婚約者と花嫁契約
さっ、さっき健太郎さんってばあっ、愛しているって言ったよね!?
じわじわと実感してきては身体中が熱くなる。

「なっ、なんだあいつは……!」

やっと我に返ったのか、すっかり見えなくなってしまった健太郎さんに叫び出した。
今にも健太郎さんを追い掛けていきそうなお兄ちゃんを、必死に宥める。

「全く!本当にあんな奴でいいのか!?まだ全然間に合うぞ!」

「もーお兄ちゃんってば。さっきまで応援してくれていたのに」

まるで別人のようだ。
するとお兄ちゃんは口籠ってしまった。

「っだって仕方ないだろう?俺の……俺の可愛い灯里があんなやつに……っ!」

今にも泣き出してしまいそうな顔に、苦笑いしてしまう。

「だけどまぁ……男に二言はない。灯里が幸せならそれでいい。……幸せになれよな」

グッと涙を堪え頭を撫でてくれるお兄ちゃん。

「うん、ありがとう。約束通り今度はお兄ちゃんが幸せになってよ。……私としては千和さんなんていいと思うけど?」

さり気なく冗談ぽく言ったというのに、なぜかお兄ちゃんは考え込んでしまった。
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