イジワル婚約者と花嫁契約
そして驚くべきことを言い出したのだ。

「うむ、大川さんか。……それもいいかもな」

「――え?」

軽い気持ちでさり気なく言ったというのに、真面目に返されてしまいどうしたらいいのか、困ってしまう。

「灯里のことも親身になってくれたし、なにより仕事に対しても真面目だ」

「うっ、うん。それはそうだけど……」

そんな簡単なものなの?お兄ちゃんにとって恋愛するってことは。

「それに正直、前からいいと思っていたんだ。だから以前悩みがあるって言われた時も灯里より優先してしまったしな」

う、そ……。本当に?

信じられない話に瞬きするのも忘れてしまった。

でもそっか。……私のことを想って今まで気持ちを隠していたのかな?
それにお兄ちゃんが恋愛する相手が千和さんなら、大歓迎だ。

我に返ったのか、照れ臭そうに頭を掻くお兄ちゃんの腕に自分の腕を絡める。
当然お兄ちゃんは驚き、目を見張った。

「あのね、私も千和さんなら大歓迎!……むしろずっと前から思っていたんだよ?お兄ちゃんと千和さんがうまくいってくれたらいいなって」

「灯里……」
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