イジワル婚約者と花嫁契約
「お兄ちゃんと千和さんがうまくいくと、私も嬉しい」

「……そっか」

そう言うとお兄ちゃんは安心したように微笑んだ。

「じゃあちょっと頑張ってみようかな。……つーか俺、恋愛するの何年振りだろ」

「そう言われてみればお兄ちゃんの浮いた話なんて、聞いたことないかも」

「当たり前だろ?俺はずっと灯里一筋だったんだから!」

そんな話をし、腕を組んだまま田中さんが待つ車まで戻った。



それから有言実行主義者のお兄ちゃんは、早速熱烈アプローチを千和さんに始めた。
最初は戸惑っていた千和さんだったけれど、ずっと片思いしていたお兄ちゃんにアプローチされて困るはずもなく、今ではふたりっきりでよく食事に行く仲だ。
私はこのままふたりはうまくいくと思っている。

一方私はというと……。


「おっ、お久し振りです!一之瀬灯里です」

緊張のあまり声が裏返ってしまうと、正面にいる健太郎さんのご両親はクスクスと笑い出した。

うっ、うわぁ~!早速やってしまった。
恥ずかしい!!

恥ずかしくてギュッと目を瞑ってしまうと、隣に座る健太郎さんは私を安心させるよう手を握ってくれた。
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