イジワル婚約者と花嫁契約
第一条 『今すぐ俺を好きになること』
「今すぐ俺を好きになれ」
「はい?」
五月中旬。過ごしやすい今日この頃。
誰もが知っている有名な割烹店の庭園にて、窮屈な着物姿で作り笑いを浮かべていたものの、その作り笑いも一瞬にして消え失せる。
そんな私の顔を見た目の前にいるお見合い相手は、満足気に意地悪く微笑んだ。
「なんだよ、とんだ能面女だと思っていたのに、普通の顔もできるじゃん」
「なっ……!」
なにそれ!“能面女”だなんて、失礼過ぎる!
咄嗟に拳を握りしめてしまうと、ますますこの男は意地悪そうに顔を歪める。
「いいね、その顔。俺、意外とそういう顔にグッとくるんだよね。結婚したらその顔で見上げて欲しいな」
「……っ!」
なんなのこの人!
確かに私は今、この目の前にいる男とお見合いをしている状況だ。
さっきまで一緒にいたお互いの両親も仲人さんも、決まり文句の「あとは若い人達だけで……」なんて言いながら、この立派すぎる庭園に私達ふたりを放り出したのだ。
「はい?」
五月中旬。過ごしやすい今日この頃。
誰もが知っている有名な割烹店の庭園にて、窮屈な着物姿で作り笑いを浮かべていたものの、その作り笑いも一瞬にして消え失せる。
そんな私の顔を見た目の前にいるお見合い相手は、満足気に意地悪く微笑んだ。
「なんだよ、とんだ能面女だと思っていたのに、普通の顔もできるじゃん」
「なっ……!」
なにそれ!“能面女”だなんて、失礼過ぎる!
咄嗟に拳を握りしめてしまうと、ますますこの男は意地悪そうに顔を歪める。
「いいね、その顔。俺、意外とそういう顔にグッとくるんだよね。結婚したらその顔で見上げて欲しいな」
「……っ!」
なんなのこの人!
確かに私は今、この目の前にいる男とお見合いをしている状況だ。
さっきまで一緒にいたお互いの両親も仲人さんも、決まり文句の「あとは若い人達だけで……」なんて言いながら、この立派すぎる庭園に私達ふたりを放り出したのだ。