イジワル婚約者と花嫁契約
「だから伝えたまでだ。文句ある?」

「……っありません!」

こうやってたまに健太郎さんは意地悪なことを言う。
だけどそんな健太郎さんも嫌いになんてなれない。……ううん、なれるはずないんだ。

「ちなみに今は灯里にキスしたいときなんだけど……いい?」

そんな聞き方、反則すぎる。
健太郎さんは知っているでしょ?私が迫られたら拒めないって。
それを知っていてわざとこんな聞き方をしてくるんだ。

昔の私は夫になる人に、少し悪い人がいいと言っていたみたいだけど、今もそれは変わらないのかもしれない。

いまだにドヤ顔で覗き込んでくる健太郎さんに背伸びをし、自分からキスをした。

一瞬のキスに健太郎さんは驚き、目を見開いたまま。

こうやってたまには健太郎さんの意外な顔を見ることができる。

いまだに驚き固まったままの健太郎さんに、笑顔で言った。
「参りましたか?」って。
そうしたら健太郎さんは困ったように笑いながら言ったんだ。
「あぁ、参った」って。

そしてとびっきり甘いキスを落とす。
何度も何度も、一生続けてほしいくらいの甘いキスを――……。
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