イジワル婚約者と花嫁契約
それから月日は流れ、俺は無事に大学を卒業し、父さんの会社で働かせてもらいながら経営のノウハウを学んだ。
そしてついに夢だった自分の会社を立ち上げたんだ。

その頃になると灯里はすっかり思春期を迎え、一段と可愛らしさが増していた。
時々クラスの男子に告白をされた、と聞くと気が気ではなく何度仕事を抜け出して圧力をかけにいったか……。



「代表、いい加減灯里さんの学校へ無断で行くのやめていただいてもよろしでしょうか?」

この日も心配で抜け出し灯里の様子を見に来ていたら、先回りしていた田中に捕まってしまった。
どうやらこいつには俺の行動パターンなどお見通しなようで、もうこんな攻防が何度も繰り返されていた。

「それは無理。何度も言うけど兄として妹の心配をするのは当たり前だろ?ましてや灯里はあんなに可愛いんだから」

高校生になった灯里は本当に可愛い。
特別美人とかスタイルがいいとか、そういう可愛さじゃなくなんて言うんだろうか。
灯里の存在そのものが可愛いんだ。
雰囲気とか笑った顔とか声とか。
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