イジワル婚約者と花嫁契約
なんとか口に含んでいた紅茶を飲み込み冷静に努めながら、目の前でニコニコと笑うお父さんに恐る恐る聞いた。

「あの……それって本当に私なんだよね？」

「もちろん、他に誰がいるんだ？」

すぐに返ってきた言葉に、唖然としてしまう。

「え……ちょっと待って。私まだ二十四だよ！？お見合いするような歳じゃない気がするんだけど……」

大学卒業して二年。
兄の会社に入社したものの、覚えることはまだまだあって決して一人前とは言えない。
だけどそんな生活も楽しいと思えていて、忙しい毎日に充実感を覚えていた。
なのにいきなりお見合いだなんて……。
それってもしかしてお父さんもお母さんも、私に早く結婚して家庭に入れと言いたいのだろうか？

そう思うと、つい本音が漏れてしまった。

「それに私、まだまだ仕事したいし……」

中途半端なまま辞めるのは嫌だし、この歳で家庭に入るとか考えたことなんてなかった。

だけど両親の思惑は違ったようで、ふたりともキョトンとしちゃっている。
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