イジワル婚約者と花嫁契約
「灯里、小さい頃よく言っていたじゃないか。将来はお嫁さんになりたいと。なぁ?」

「えぇ。そんな灯里にぴったりな相手なのよ」

小さい頃って一体いつの頃の話をしているの?

呑気にふたりで目を合わせ会話をする姿に、空いた口が塞がらない。
両親のことは大好きだ。
優しくて、そして理想にしたいくらい今も仲が良い。
ずっと本当の娘のように育ててくれたし、いつも私の意見を尊重してくれている。
まぁ……その結果がこれなのかもしれない。

小さい頃語った幼い子供の夢を鵜呑みにして、お見合いをセッテイングしちゃうんだから。

「きっと灯里も気にいると思うぞ。それに相手は結婚後も仕事を続けていいと言ってくれているし、将来も有望な外科医だ」

「そうそう。理解力もあって素敵な人なのよ」

理解力がある?素敵な人?将来有望な外科医?

そんな小説に出てくるヒーローみたいな人がお見合い?
なにかの間違いじゃないだろうか。
相手は私だよ?

「その人、私の写真とか見たの?」

もしかして私同様、話を持ち掛けられただけで私の顔を知らないのかもしれない。
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