イジワル婚約者と花嫁契約
そんな考えが頭をよぎったが、両親から返ってきた言葉は予想外なものだった。

「もちろんよ。灯里のこと気に入ってくれたそうよ。向こうから是非って言われたし」

「……嘘」

写真を見て気に入った?本当に?

自分で言うのも虚しくなるけれど、私なんてどこにでもいるような一般OLだ。
そんな私の写真を見て気にいったなんて、正直信じられない。

「とにかく会うだけ会ってみたら?これも社会勉強だと思って」

「そうだな、嫌なら断ればいいし」

呆気にとられる私とは違い、いつものように呑気な両親。

会うだけ会う?嫌なら断ればいい?
本当にそんなことできるのかな?お見合いなんてしたことないから分からないけれど、簡単に断ることができるものなの?

不安に襲われつつも、ニコニコと微笑むふたりを前に『嫌だ』とは言えない雰囲気だ。

仮にも私の夢を叶えるためにセッテイングしてくれたのだから。
もう腹を括るしかないな、これ。

無意識に出てしまった溜息。

「分かったよ。会うだけ会ってみる。……でも本当、嫌だったら断るから」
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