イジワル婚約者と花嫁契約
「これからもずっとだからな」

念を押すように付け足された言葉に、無意識に頷いてしまった。
すると一気に健太郎さんの表情は和らいだ。

それ以上なにも言うことなく、健太郎さんは腕を離すとそのまま自分の手と私の手を絡ませた。

「それと手は必ず繋ぐこと」

少しだけ意地悪気に微笑み、歩き出す。

なんだろう、これ。
胸の奥がキューッて鳴って苦しい。
今日は私、健太郎さんにドキドキさせられてばかりだ。

つい一ヵ月前はこんな縁談話断るつもりでいたのに――。
今の私に断ることなんてできるの?

繋がれた手を振りほどくことも出来ないのに――。

すぐにパーキングに辿り着き先ほど同様、健太郎さんにドアを開けてもらい車に乗り込む。

「時間あっという間だったな」

そんなことを話しながら、健太郎さんは車を発進させた。
帰り道、話題を振ってくれるものの、曖昧な返事と愛想笑いを返すだけで精一杯だった。
あまりに変化してしまった自分の気持ちが、信じられなくて……。
会ったのは今日で二回目なのに、な。
私と他の人の前では態度が変わっちゃう二重人格な人だし、強引だし……。
女慣れしてそうだし、こんな人となんて絶対恋愛できないって思っていたのに。
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