イジワル婚約者と花嫁契約
第五条『浮気は絶対にしないこと』
「……普通だ」

次の日の朝。
昨日あのまま寝てしまったことに激しく後悔し、慌ててシャワーを浴びて支度中に届いた一通のメール。
そこにはたった四文字【おはよう】と書かれていた。

あまりに普通すぎるメールにメイクをする手が止まってしまう。

なんか私一人だけ意識しているみたい。
昨日なんてドキドキして疲れちゃって、あのまま寝ちゃったというのに……!
それにシャワーを浴びている時から、健太郎さんからいつメールが届くのかってソワソワしちゃったし。
朝から疲れてしまった。

大きく息を吐き、残りのメイクを済ませ鞄を手にし部屋を出た。
すると一階からは香ばしい珈琲の香りが漂ってくる。

その香りに誘われるようにダイニングキッチンへ向かうと、いつものように朝食の準備を進めるお母さんと、優雅に新聞を読みながら珈琲を飲むお兄ちゃんの姿があった。

「おはよう」

いつものように挨拶をするとお母さんも「おはよう」と返してくれる。だけど……。

「灯里ー!昨日はごめんな!」


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