イジワル婚約者と花嫁契約
期待で胸がドキドキする中、ジッとお兄ちゃんを見つめてしまう。
するとお兄ちゃんは書類を見る手を休め、驚いたように目を見開き私の方を見た。

「灯里お前……もしかしてヤキモチ妬いているのか?」

「……は?」

予想外な言葉に、目が点になる。

「なんだよこの!可愛い奴め!」

「ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!?」

勝手に私がヤキモチ妬いたと勘違いをして、嬉しさ溢れて狭い車内だというのに抱き着いてきた。

「悪かったな、灯里より大川さんを優先して。だけど安心しろ!俺が一番大切に思っているのは灯里だからな」

ギュッギュッと苦しいくらいに抱きしめられて声が出ない。
これはもう今更違うとは言えないし、これ以上千和さんとのことを聞くことは無理だ。

「今度絶対埋め合わせするからな!」

「うっ、うん……」

結局しばらくの間、嬉しさを噛みしめるようにお兄ちゃんに抱きしめられ続けていた。



「どうぞ」

田中さんにドアを開けてもらい、お兄ちゃんに続いて車から降りる。

「田中、車頼むな」

車の中で充分スキンシップをしたからか、お兄ちゃんは足早にオフィスへと向かっていく。
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