イジワル婚約者と花嫁契約
今でも鮮明に思い出せる。あの時の感触――。

「ちょっと灯里ちゃん!今日のランチの時、詳しく聞かせてもらうからね!」

「えっ!?」

「絶対に!!」

「……はい」

有無を言わさぬ物言いに、了承するしかなかった。


そして迎えた昼休み。
いつもは社食で取っているけれど、今日は千和さんの提案で外に出ることになった。
やってきたのは、千和さんオススメのバイキングのお店。
お皿に食べたいものをこんもりと盛り付け、空腹を満たしていく。

「で?本題に入るけど、例の彼となにがあったの?」

「あったというかなんというか……」

千和さんは私にとって頼りになるお姉さん的存在。
包み隠さず自分の気持ちも含めて全て話した。

「きゃーやったじゃない!ついに灯里ちゃんにも恋の季節がきたわけね!」

「いや、まぁ……はい、そう、なのかもしれません」

素直に認めると、千和さんは声を押さえ喜びを噛みしめる。

「そうよ!灯里ちゃんは今が恋愛適齢期なんだから、どんどんしなくちゃだめよ!経験積むことってすごく大切よ!」
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