檻の中の国
男は不思議そうな顔でこちらから離れていった。
「…お前、あの女に情でも沸いたのか?
…売り物だぞ?
ま、分かるけどよ。美人だもんな。」
「…うるさい。品物に傷が付かないようにだ。」
品物………!?
「品物って…どういうことですか…。」
男が薄ら笑いを浮かべてこちらを見た。
「いいコト教えてやるよ。
この街は、奴隷市場とマフィア…………
そしてそれら全てを支配する新政府軍で成り立ってる。
お前みてぇな美人は、新政府軍のイカれた連中に高値で売れんのさ。」
螢は…最初から…騙すつもりで…
怒りは不思議と湧かなかった。
ただ…悲しかった。
やはり自分は誰にも必要とされないってことが浮き彫りになったようで。