寂しがりヒーロー
「あ、あともう一つ!」

「えっ?」

「...伝えたいことが、あるんだけど...」

「えっ、なになに?」


僕はまた一つ深呼吸をした。
なんだかこれは、伝えるのがちょっぴり怖くて、恥ずかしくて、心臓がいつもより騒がしくなるような、そんな言葉。


「僕、カモちゃんのこと、好き、だよ」


一生懸命に声を絞り出して、カモちゃんの目をじっと見つめて言う。

返事は、すぐに帰ってきた。


「私も好きだよ?伊月のこと!」


それはいつも通りに緊張感がなく、弟に向けるような言葉で。


「いや、そうじゃなくて...。分かった。もっと適切な言葉に変える!」

「ん?」

「カモちゃん...僕、カモちゃんのこと、愛してる」


一瞬、時が止まったようだった。
カモちゃんはずっと固まったままで、僕もそのまま動けなくて。


「え、えぇっ!?」


そんな沈黙を破ったのは、カモちゃんの間抜けな声だった。


「え、あ、それって...」

「カモちゃんと付き合いたいって意味、だよ」


途端にカモちゃんの顔が真っ赤になって、林檎みたい。

それに、カモちゃんの表情が、あまりにも甘くて、溶けちゃいそうで。

僕は、カモちゃんにキスを...


「よっしゃ!」


...キスを...


「おい玲!バレるだろ!?」


...キス...を...


「すいませーん!」


するはず、だった。
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