寂しがりヒーロー
「ごちそうさまでしたー。伊月、私の部屋に行こ?」

「うん!」


僕はカモちゃんの後ろをついていく。

そして、カモちゃんはベッドに、僕は椅子に腰かけた。


「...カモちゃん」

「何?」

「...ありがと」


一緒にごはん食べてくれて、ありがと。
寂しさから救い出してくれて、ありがと。


「ふふっ、どういたしまして」


カモちゃんはニッと笑う。

昔から、変わらない。
カモちゃんは昔から、笑顔が似合う。

初めて会った時も、カモちゃんは笑ってた。

僕の中で、一番古い記憶かもしれない。
それまでの記憶は、なんか靄が掛かったみたいに見えないんだ。
...思い出すことを、拒否してるんだろうか。

ずっと泣いてた僕の前に、ちょこちょことやってきて、『どーしたの?』とカモちゃんは首を傾げた。
確か、僕は返事をしなかった。
いや、出来なかった。
涙が止まらなくて、ただただ、悲しかった。


『...笑ってたら、いいことあるよ』


泣いている僕に、カモちゃんは笑顔を向けた。


『もなみもね、いっぱいいっぱい泣いたけど、ニーって笑ったら少しだけ、ポカポカするんだよ』
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