寂しがりヒーロー
教室に入ると、男子全員が背筋を伸ばす。

これは...まずい。


「おはよー、みんな」


玲が場の空気を和ませようと、ニコニコと笑顔で挨拶をする。


「お、おはよう、玲、い、伊月...」


いや、僕の名前だけ噛まないでよ...。
我ながら言いやすい名前だと思うよ、伊月って。

それに、こんなヘラヘラしてる僕を相手にこんなに畏まってたら、カモちゃんに怪しまれる。


「...玲」

「ん?何ー?伊月」


玲はヘラッと笑って僕を見る。
玲は慣れてきたみたい。
ちょっと安心。


「...お願い」


僕がそう言うと、玲は少しキョトンとした後、「あぁ、了解!」と敬礼のポーズをして、みんなの方へと走っていった。

玲にはたまーに頼むんだ。
僕の前で畏まっている男子がいたら、その男子に他の男子と同じように接してくれるように言いに行く。
< 26 / 108 >

この作品をシェア

pagetop