寂しがりヒーロー
「やっぱすげぇ、伊月さん」

「本当、キレた時の伊月さんって...怖い」

「んー?何か言った?」


背後から聞こえる声に、僕は笑顔で答える。


「い、いえ、なんでも。すげぇなぁって、思っただけっすよ」

「ふーん...ねぇ、それよりカモちゃんに会いたいなぁ」

「え?あ、はいっ、分かりました」


仲間の一人が体育館の扉を開けると、カモちゃんは飛び出すように走ってきた。


「伊月っ!」

「カモちゃんっ!」


カモちゃんは僕の方に駆け寄り、「大丈夫!?怪我無い?」と息を吸う間も無く僕に問い掛ける。


「お、落ち着いて、カモちゃん!僕はここにいるみんなが助けてくれてたから大丈夫!」


僕がそう言って微笑むと、カモちゃんは安心したように息を吐いた。


「それより、カモちゃんは?」

「私も大丈夫。ちょっと怖かったけど、もう平気!ありがとね、来てくれて」

「それは僕じゃなくて先輩達に言ってよ」

「あ、そっか。えっと、先輩方、助けてくださってありがとうございます!」


そう言われてみんなは、少し困ったように「いや、全然」と微笑んだ。
< 35 / 108 >

この作品をシェア

pagetop