寂しがりヒーロー
「伊月、早くー!」

「待ってよカモちゃん...っ」


愛用しているダボダボのグレーのパーカーに袖を通し、僕はカモちゃんを追いかけて家を出て、カモちゃんにギュッとくっついた。

カモちゃんと一緒だと、安心する。

だから、僕はカモちゃんにくっつくのが好き。


「ほんっと、伊月は甘えただよねー」

「いーじゃん、安心するんだもん」

「うん。いいよ。手がかかる弟だなーってだけだから」


やっぱりね。
僕はカモちゃんの弟だ。

そのくらいの立ち位置の方が安心かな。

...いや、カモちゃんに彼氏が出来たら一緒にいられなくなるかも。
そんなの嫌だな...。

そんなことを思いつつ、僕らは校門をくぐった。


「あ、おはようご...おはよう!伊月さ...伊月!」

「おはよう、玲くん」

「おはよ、伊月」

「おはようございます、瞬先輩」


全く、危ないじゃん、玲くん。
僕に敬語使わないでよね。


「おっはよー!望波!」

「あ、おはよ!凜!」

「今朝から弟のお世話かい?」

「まぁそんなところ~。じゃあ、また教室で会おうね、伊月」

「うん、またね、カモちゃん」


挨拶を交わし、カモちゃんは友達と走っていく。


「...すみません、伊月さん」


玲くん、いや、玲が申し訳なさそうに頭を下げる。


「もう、気をつけてよ」

「でも、伊月さんを呼び捨てにするなんて、やっぱ抵抗ありますよ」


そう言ったのは、瞬先輩、じゃなくて、瞬。
瞬は僕の一個上。
だけど、瞬はすっごく絡みやすいから呼び捨てで呼んでる。

それなのに瞬が僕に敬語なのは、僕が、最強だって言われてるから。

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