寂しがりヒーロー
パーティーも、ついに終盤。


「ケーキ食べよ、ケーキ!」


カモちゃんが嬉しそうにケーキを持ってきた。


「これ、私が作ったんだよー」


カモちゃんは自慢気にケーキをテーブルに置いた。


「おぉー!旨そう!」

「やっぱりカモちゃん上手!」


カモちゃんは上手に切り分けて、みんなに配る。


「食べよ食べよ!」

「だねー、いただきます!」

「いただきます!!」


みんながケーキを食べ始めて、僕も一欠片、口に放り込む。
クリームは甘くて、フルーツは甘酸っぱい。

今まで食べた中で、一番美味しい。


「ありがと」


僕のそんな小さな一言は、ちゃんとみんなに届いたらしく、みんなが僕を見て微笑む。


「...今までで、一番楽しい誕生日だった...かな」

「...ふはっ、かな、ってなんだよ!だったでいいだろ?」


絋ちゃんのその言葉に、みんなが笑う。


「...うん。だった」


僕もそう言って笑う。

親に捨てられて、生まれてきた意味が見出だせないことなんか、毎日のようにあった。
一人になれば、必ず考えてしまうことだった。

だけど今は、そんなこと、1㎜も思わない。

今僕は、すっごく楽しい。
生まれてきたことをこんなにも祝ってもらえるのが。

だから、思ったんだ。

生まれてきて、よかった...かな、って。

...いや、今だけはもっと確信していたい。


生まれてきてよかった、って。
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