寂しがりヒーロー
...強い人の名前しか覚えないって訳か。
つまり、やっぱり彼が噂の。


「伊月ってさ、喧嘩、したことあるだろ?」

「えっ...?」

「なんか、そんな目してるから。結果は知らねぇけど」


僕、どんな目してるんだろう。
冷酷な目とかだったら嫌だな。

仁太くんと話していると、なんだか下に見られてるような感じがする。


「...仁太くんがちゃんと名前を覚えてる人って、いる?」

「今んとこ、いねーな。あ、家族は別だぜ?」

「友達は?」

「...んなもん、いらねー」


仁太くんは、周りに興味を示そうとしない。
だから、なんか他の人とは違う空気を纏っている。

っていうか、今まで負けたことないんだ。


「...それよりさ、伊月、この高校って、この辺りではトップなんだろ?ここのトップって、誰?」


...誰って...僕だけど。
いや、そんな自覚、そんなにないけど。

そう言おうかと思ったけど、止めた。


「...今日の放課後、裏庭に行けば分かるよ」

「へぇ。サンキュ」

「...うん」


...なんか、僕から仕掛けたみたいになったけど、どうせバレちゃうんだし。
だったら、今日、さっさと終わらせちゃおうかなー、なんて思って。

それに、絋ちゃんとかいるし、どうにかなると思うから。
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